本年の観光庁事業の「横浜の看板商品YOKOHAMA TRUSTにおけるガストロノミーパターン複数創出事業」は、昨年我々がYOKOHAMA TRUSTという商品を組成した際に日米和親条約で有名なペリーガストロノミーを違う人物で横展開する企画です。晩餐会のメニューを現代風に横浜の食材を使ってアレンジし、それを日米和親条約が結ばれた場所で食べていただくというのがこのペリーガストロノミーですが、このペリーガストロノミーに参加していただいた方から「横浜であればペリーだけじゃないよね」という意見をいただいたことから着想が始まりました。選択肢として、ガストロノミープランが複数あればお客さんにも幅の広いターゲットが見込めます。
アメリカのワシントンD.C.の議事堂の横にポトマック川という川が流れています。周辺は桜が咲き誇っていますが、その桜は横浜に住んでいたジャーナリストのエリザシドモアさんの一言がきっかけになって日本からアメリカに寄贈されたんですね。人力車旅情という彼女の本の中で、たくさんの当時の日本が描かれており、日本の桜ってとっても綺麗よというようなことがいくつか書いてあります。そのエピソードをうまく使って、シドモア桜のガストロノミーというのを今回企画開発しました。まさに横浜の外人墓地にご家族と一緒にお眠りになっていて、残念ながらお子さんがいらっしゃらなかったので直接伝わってきた話っていうのが少ない人ではありますけれども、本から読み解いて様々ガストロノミープランを企画しました。
宿泊はホテルニューグランド。創設者の原三渓さんがとても好きだった卵を使った朝食があるんですね。その朝食は今では出されていませんが特別に横浜を感じていただきたいということで、ホテルニューグランドさんに再現していただいて、3種類作っていただきました。当時の横浜のストーリー展開はここから始まります。朝食後に、ホテルニューグランドさんのマイスターに館内を案内していただきました。約100年前のレガシーがたくさん残っているホテルなのでタイムトリップ感満載です。
その後、以前は横浜焼と言われた真葛焼ミュージアムをエクスクルーシブに楽しんでいただく贅沢な体験を。アメリカのフィラデルフィア万博で日本の誇りとまで言われた焼き物で、現在は大変残念ながら窯も含めて存在しませんが、その歴史に魅せられた横浜のビジネスオーナーがプライベートコレクターであると同時に、真葛焼のプライベートミュージアムを作ったんですね。日本で真葛焼に一番詳しい方と言ってもいいと思いますが、自ら真葛焼のお話をしていただきながら、ミュージアムのご案内をしていただきました。
その後、シドモアの人力車のエクスペリエンスを実際にご体験いただきます。この人力車で当時のシドモアの時代の横浜の様子などをお話しながらお昼の会場に向かっていただきます。お昼はシドモアガストロノミーということでいくつかのバージョンがあります。
そのうちの一つが横浜らしく中華バージョンということになります。7種類のメニューからなっている中華のフルコースで、これも全て人力車旅情から着想を得て1からメニュー作り、メニュー開発をした中華料理になります。本の中に、私は鰻が好きだったよとか、牛鍋がとっても美味しかった、などの記述があり、各種文献を参考にしながら実際に現代風に全ての食材あるいは全てのメニューが本から成り立っている、本を参考に作り上げたというような非常に珍しいガストロノミーの中華バージョンを楽しんでいただきます。
一方で、もう一つ、鰻が好きだったということで、うなぎのぼりとシドモアも作りました。元々銀行の支店だったうなぎ屋さんがあり、銀行のいわゆる金庫の中っていうのが今このお店の個室になってるんですね。その個室でウナギを食べていただく、というようなプランです。国内外金融系のお客さんには非常にマッチした商品だと思っており、日本人も外国人もぜひいろんな人にトライしてみていただきたいと思います。
ほかに、シドモアさんがきっかけになってアメリカに日本から送られた桜は、使い切れなかった分の苗木をアメリカが日本に送り返しているんですね。それを里帰り桜と言いますが、横浜のいろんな場所にそれを植樹していこうという活動があります。その植樹の経験も旅行に加えていくことになりました。例えば本企画においては、横浜の本街小学校が、今年が150周年ということで、こちらに苗木を植樹させていただきました。ご家族のお子さんなりお孫さんなりが、「うちの父親が植えた桜こんなに大きくなったんだよ」、「うちのおばあちゃんが昔植えた桜がこんなに大きくなったんだよ」と言いながら、また横浜に訪れていただくストーリーも考えられると考えており非常にいい体験だと思います。
ガストロノミーに話を戻しましょう。和食もどうしても作りたかったというところがあって、お弁当かなということでシドモア和食弁当というスタイルもこちらに用意しております。写真をご覧いただくととてもカラフルで、こちらもシドモアの本からヒントを得てメニュー開発されたものです。
その他に、例えばチャップリンは天ぷらが好きで36匹のエビの天ぷらを食べたという逸話が残っていて、いろんな仕掛けを考えながら横浜の胡麻油を使って揚げていただいてチャップリンコースを作るようなプランも同時並行で企画しています。
ダグラスマッカーサー、日本が戦争に負けたときに、降伏調印式の前3日間はホテルニューグランドに宿泊したわけですが、その宿泊した部屋というのがマッカーサースイートとして現存します。本人が執務した机もそのまま残っていて、その後は山手の外国人居留地に引っ越したようですけれど、アメリカの退役軍人の方々にとってはペリーにしてもマッカーサーにしても英雄でしょうから、マッカーサーが当時食べたものや、朝卵を必ず二つ食べる習慣があったようで、その辺りをヒントに食材開発、ガストロノミー開発を企図しています。
野球でいえば、ベーブ・ルースも来てますし、人に歴史ありということで人に基づく食材開発あるいはメニュー開発というのは間違いなくできますね。
当社としてはこのガストロノミープランを人の歴史に基づいて考えていくということを基本的な当社らしいガストロノミー戦略、観光資源戦略の一つとして今後もやっていきたいと思ってます。